POCKET MONSTER TRAINERS
      PROLOGUE




季節は春、桜の木も程よく色づいたころ、暖かい風の通り抜ける場所。ここはジョウト地方、ワカバタウンから出ている29番道路。
ワカバタウンに近いこの場所は、子供たちの絶好の遊び場となっている。
今日も6,7人の子供達がおにごっこをして遊んでいる。その中でも目につくのが、黄色と黒の帽子をかぶり、赤がメインの服を着た男の子と
赤い髪で黒い服を着ている男の子、そして薄紫の髪に水色の瞳をした男の子の3人だ。

「おーにさーんこーちらっ!てーのなーるほーへ!」

帽子の男の子がそのせりふを言いながら手をパンパンとたたき、おにやくである薄紫の髪の男の子をさそっている。
しかし、おにやくの薄紫の髪の男の子はなかなか帽子の男のこのほうに来ない。そのことに帽子の男の子は少しふくれる。

「はやく来いよ!おにの”ターツキ”くーん!」

タツキと呼ばれた薄紫の髪の男の子は、帽子の男の子のほうに体の向きを変え、思いっきり走り出して向かっていく。

「そんなに来てほしいんなら望みどおり行ってやろうじゃん!覚悟しろよ!”ゴールド”!」

帽子の男の子ーゴールドはニヤリと笑うと、回れ右してすぐさまかけだし、おにのタツキをおびきよせる。が、
走り出したゴールドが前を向くと、赤い髪の男の子が視界に入る。

「わっ、ちょ、ちょっと”シルバー”どいてー!」

赤い髪の男の子―シルバーはその叫び声に気づき振り向く。が、

ドンッ!

よける暇もなくゴールドの突進をくらってしまう。2人はそのままごろごろと転がって行き・・・・

ゴツンッ!

その広場にあった木にぶつかってしまう。

「いててててて・・・」

2人が声を合わせて言ったときだった。

ポトッ

2人のそばに何かが落ちてきた。その何かを見たシルバーは一気に青ざめてしまう。

「げっ、スピアーの巣だ!」

シルバーが大声を上げたとたん、木の上からブゥゥゥゥゥゥンという音が聞こえた。
その音に気づき全員が上を見ると、怒ったスピアーが木の上から下りてくるところだった。

「に、逃げろー!」

ゴールドが思いっきり叫ぶ。その声でみんなわぁぁぁぁと悲鳴を上げてかけだす。だが、

ズサァッ!

その音に気づいたゴールドが振り返るとそこには何かにつまづいて転んでしまったタツキの姿があった。
そのタツキに向かって1匹のスピアーが毒針を向けて襲ってくる。

「タツキィィィィッ!にげろぉぉぉぉぉ!」

ゴールドが叫んだときにはスピアーはもうタツキの数メートル先まで来ていた。
ゴールドは辺りを見回すが、ほかの子は全員もうどこかへ逃げてしまっていて誰もいなかった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そこへタツキの叫び声が聴こえ、ハッとタツキのほうを向く。

ザクッ

そのスピアーの一撃をタツキは間一髪でよけた。しかし、タツキは自分のすぐ近くの地面に刺さったスピアーの毒針を見て、気を失ってしまった。
対するスピアーは地面から毒針を抜くと、少し高く飛び、再び一気に降下してくる。

「タツキッ!」

ゴールドがあわててかけだしたそのときだった。

「バースト!火炎放射!」

そんな声がしたかと思うとタツキを襲おうとしていたスピアーが炎に包まれた。
その一撃でスピアーは戦闘不能になったようだった。
その様子を見たほかのスピアーは恐れて逃げて行った。

「よし!モンスターボール!」

投げられたボールは倒れたスピアーに当たり、シュゥゥゥゥゥと言う音とともにスピアーが赤い光に包まれる。
その赤と白に塗り分けられたモンスターボールは少しの間揺れていたが、やがてゆれが収まると同時にポーンという音がした。

「スピアー捕獲完了。転送開始。バースト、ご苦労様。」

ゴールドが声のしたほうを見ると、12,3歳に見える少年が火炎放射を出したと思われるウィンディの頭をなでていた。
少年は、黄緑色の髪に金色の瞳、白い服に青いズボン、水色の靴を身につけて首からは水色の十字架のペンダントをかけていた。
少年は様子を伺っているゴールドにやさしく声をかける。

「きみ、大丈夫だった?」

「え?あ、うん。」

ゴールドは突然声をかけられて少し戸惑っていたが、そんなのを気にしずに少年は笑顔で話しかけてくる。

「けがはない?」

ゴールドは自分の手足を見る。

「だいじょうぶみたい。」

少年に視線を戻したゴールドが返事をする。
その言葉を聞いた少年はほっとした様子でさらに言葉をかける。

「よかった。あっちの子は大丈夫かな?」

その言葉に、ゴールドはハッとして後ろを向き、大声を上げる。

「タツキッ!」

タッタッタッタッと気を失っているタツキに駆け寄る。
タツキのそばに来たゴールドは、タツキの体をゆする。そこへ少年もよってきて、ゴールドにたずねる。

「この子・・・タツキ君・・・だっけ?」

「うん。」

聞かれている間もゴールドは心配そうにタツキを見ている。少年はそんなゴールドの頭に手を置いて、またやさしく声をかける。

「タツキ君は大丈夫だよ。気を失っているだけだし、けがもかすり傷だけだ。」

「ほんとっ!?」

「ああ」

少年はゴールドの頭から手を放すと、ウィンディの背中にかけてあるバッグから救急箱を取り出し、タツキの手当てを始めた。

「はい。これで傷口も大丈夫。さてと、僕はそろそろ行かなくちゃならないんだけど、君はどうする?
 なんなら家まで送ってあげようか?見たところワカバの子みたいだし、今からなら僕も大丈夫だよ。」

「ありがとう。でもね、黄緑色の髪のお兄ちゃん、僕もう大丈夫だから。タツキが起きるまでここにいるから。」

ゴールドはまだ気を失っているタツキに目を向ける。その言葉を聞いた少年はこの子の決心は固いな・・・と思っていた。

「わかった。その代わり、野生ポケモンには十分注意してね。」

「うん。そう言えば、お兄ちゃんってポケモントレーナーって言う人なの?」

「え?なんで!?」

突然の質問に少年は少しあせった。それを気にせずにゴールドがわけを言う。

「だってお兄ちゃん、そのウィンディとすごく仲良しじゃん。それに、バトルで使うような技もしっかり出せてたし・・・。」

その言葉を聞いた少年はきょとんとした目でゴールドを見つめた。そして、何を思ったのか口元を緩める。

「あははははは!なるほどね。確かに僕はポケモントレーナーだよ。このウィンディとも一番長く一緒にいる。
 それにしても、あの一瞬でそこまで見れるのはすごいことだよ。きみはいいポケモントレーナーになれる。」

その言葉に今度はゴールドがきょとんとしてしまった。

「僕が、ポケモントレーナーに!?」

ゴールドはものすごく驚いた表情をしている。そんなゴールドに少年はまた笑顔で話す。

「ああ、きっとなれるよ。」

その言葉を聞いたゴールドはわくわくして来たような顔をして、はしゃいだ感じで言葉を口にする。

「じゃ、じゃあ僕、お兄ちゃんみたいなポケモントレーナーになって、たくさんのポケモンと仲良くなりたい!
それで、そのポケモンたちとポケモンリーグに出てみたい!」

ゴールドが最後に言った”ポケモンリーグ”と言う言葉に少年が反応したのにゴールドは気がつかなかった。
少年はすぐに笑顔に戻り、またゴールドに声をかける。

「いい夢だねでも、きみならきっと・・・いや、絶対にチャンピオンになれる。
 そのためには、ポケモンにやさしく接することを忘れないでね。」

「うん!」

その元気な返事を聞いた少年はウィンディに乗った。その直後、何かを思い出したようにゴールドのほうに向く。

「そう言えばまだ名前を言っていなかったね。僕はクロス、”クロス・タイムティナー”。
 また会えるといいね。ワカバタウンのゴールド君。

その最後の言葉にゴールドはまたもや驚いた。

「なんで僕の名前を知ってるの!?」

少年―クロスはその言葉には答えず、ただにっこりと微笑んでウィンディに”神速”を命じてヨシノシティ方面へと行ってしまった。
ゴールドはクロスとクロスのウィンディが見えなくなるまで、その後姿を見ていた。
クロスの姿が完全に見えなくなったとき、ゴールドは決意を固める。

「ポケモントレーナー・・・・か。よーし、なってやる!クロス兄ちゃんのようなすごいポケモントレーナーに!
 そして、ポケモンチャンピオンに!」

どこでも起こるような出会い。この出会いがゴールドにとってのことの起こりだと言うことはまだ誰も知らない。
ただ、5歳の無邪気な少年が1人、ポケモンチャンピオンを目指すようになっただけだった。

時を同じくして、カントー地方・マサラタウンを4人のポケモントレーナーが旅に出た。

そして、物語はゴールドがクロスと出会ってから6年後のことである。

ピピピピピピピピピピピピピピピ・・・・・・・・



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