―ワカバタウン 始まりを告げる風の吹くまち―

ゴールドは町のほぼ中心にある公園に来ていた。
日が高くなってきたこともあってか、だんだんと人が目につくようになって来た。
公園の時計は10時半をさしている。

「ゴールド!」

名前を呼ばれて振り向くと、手を振りながら駆け寄ってくる赤い髪の少年が目に入る。

「おはよう!シルバー!」

ゴールドは元気に挨拶をする。赤い髪の少年はゴールドの前まで来ると、
呼吸を整え改めて挨拶をした。この赤い髪の少年こそ、
ゴールドの持っている写真に写っていた少年、シルバーだ。

「今日、晴れて良かったな。」

シルバーが話しかける。

「そうだね。」

ゴールドが笑顔で答える。

「そんじゃ、早速ウツギ博士の所へ行くか。」

「うん!」

ゴールドは強くうなずく。そして、二人はウツギ研究所に向かって歩き出した。





POCKET MONSTER TRAINERS
第2話 「親友の後姿」








「ねえ、シルバーはどのポケモンもらう?」

公園を出たところでゴールドが質問する。
シルバーはいきなりのことに少しきょとんとした表情をした。が、すぐに表情を元に戻し、質問に答える。

「そうだな・・・・・ワニノコ・・・かな?」

シルバーは考えながら答える。それを聞いたゴールドはちょっと顔が曇った。

「どうした?」

シルバーが不思議そうに聞く。

「だってぇ、僕ヒノアラシを選ぶつもりだからさ。シルバーとバトルしたら負けちゃうかなぁ・・なんて。」

「なるほどね。」

その後も2人はいろいろと話をしながら北へと向かっていた。
そして、2人が比較的人通りの多い通りに出たとき、

「じゃあさ、シルバー・・・・・」

ゴールドが何か質問を使用としてシルバーの顔を見たとき、そのシルバーよりも先にいる歩行者の中の1人に目が留まる。
後姿だったが、はっきりと髪の色は見えた。

薄紫色の髪・・・。

「ゴールド?どうした?」

シルバーがゴールドの様子を伺う。
しかし、ゴールドはシルバーが話しかけるのにも耳を貸さず、その見覚えのある髪の人物を追いかけようとかけだす。

「お、おい!ゴールド!」

シルバーはゴールドを呼びとめようとする。が、ゴールドはシルバーの声に耳を貸さなかった。
ゴールドが追いかけている人物は、ワカバ商店街のほうに曲がって行った。ゴールドも見失いたくない一心で走り、その角を曲がる。
そしてその人物を目で探すが、その人物は見当たらなかった。

「はあ・・・はあ・・・・・・くそっ・・・」

肩で息をしながらゴールドが悪態をつく。

「ゴールド!」

その声とともに、ゴールドの肩に手が置かれる。振り向くと、そこにはゴールドと同じ様に肩で息をしているシルバーがいた。

「いきなり血相変えて・・・・どうしたんだよ。」

かなり辛そうな表情でシルバーが聞く。

「タツキが・・・・。」

「え?」

ゴールドが言った一人の名にシルバーが反応する。

「タツキがいた。」

「なんだって!?」

ゴールドの口から出た言葉にシルバーは驚きを隠せない。

「ちょっと待て!タツキは4年前に・・・・。」

「でも!」

シルバーの言葉をさえぎるように、ゴールドが少し大きな声で言う。その普段見せないようなゴールドの態度に、シルバーは言葉を失った。

「でも、あの髪の人はそうそういるもんじゃないよ・・・。」

ゴールドは顔を下に向ける。

「俺も人のこと言えないが、確かにあの色は独特だからな。」

シルバーがそれだけ行って黙りこむ。

〜♪〜♪〜♪〜♪

「――――!」

シルバーがどうしたらゴールドが元気になるかを考えているときに、商店街のシンボルである大時計が鐘の変わりに、音楽で時をつたえる。

「え!?」

2人は同時に大時計を見る。

11時・・・・・。

「ゴールド、ウツギ博士との約束って・・・・。」

「確か11時・・・・。」

2人は顔を見合わせる。それと同時にあせる気持ちが出てくる。

「やばい!走るぞっ!ゴールド!」

「え、あ、ちょっと待ってよシルバー!」

ダッ!

先に走り出したシルバーを追ってゴールドも走り出す。2人は北へと延びる通りに入り、ウツギ研究所を目指す。


そのころ、ウツギ研究所。

1人の少女がウツギ博士と話をしていた。少女は赤いシャツに白い上着、黒と黄色のスパッツを身に着けていた。
少女は二言三言、ウツギ博士と話すと、モンスターボールが3つおいてあるテーブルに歩み寄る。
そして少しその場で何かを考えたあと、1つのモンスターボールを手に取る。

「博士、私チコリータをもらいますね。」

少女が振り向き、ウツギ博士に話しかける。ウツギ博士はそれに答えるように話し始める。

「いいよ。そのチコリータはね、日光浴が好きみたいだから晴れた日には外に出してあげるといいよ。
それと、わかっていると思うけど、チコリータは草タイプで育てやすいポケモンだ。」

ウツギ博士が、笑顔で少女にアドバイスをする。少女は微笑み、言葉を返す。

「わかってます。だてに捕獲の専門家(ゲットのスペシャリスト)と呼ばれてませんから。
ポケモンの知識は結構あるほうですよ、博士。」

「ははは、そうだよね。やっぱりきみなら安心してチコリータを渡すことができるよ”クリス”ちゃん。」

ウツギ博士が、相変わらずの笑顔で少女―クリスに話す。

「あ、そう言えばチコリータを1回ボールから出してあげなきゃ。」

そう口にすると、クリスは腰につけておいたチコリータのボールを手に取り、モンスターボールの開閉スイッチを押した。
それと同時にボールが開き、中からは白い光があふれる。その光はだんだん形作られていき、
ボールに収まっていた、頭にはっぱの生えているポケモン―チコリータの形になる。

ボールから出てきたチコリータは「チッコー」と一鳴きすると、クリスの足元に駆け寄る。
クリスは駆け寄ってきたチコリータをしゃがみこんで抱き上げる。

「よろしくね。チコリータ。」

クリスがチコリータに向かって挨拶をすると、チコリータもそれに答えてか笑顔で一鳴きした。

バンッ

そのとき、研究所のドアが行き追いよく開いた。

「博士っ!!」

入ってきたのはゴールドとシルバー。二人ともかなり息を切らしている。

「(あれ?・・・この子たちどこかで・・・・・)」

クリスはゴールドたちを見た瞬間に思った。しかし、いくら考えてもぜんぜんわからない。
クリスが考え込んでいる間にも、ゴールドたちは呼吸を整え、ウツギ博士としゃべり始めていた。

「ごめん博士。遅れちゃった・・・。」

「気にしなくていいよ。さあ、こっちにおいで。」

ウツギ博士は笑顔で2人に語りかけ、モンスターボールがおいてあるテーブルへと連れて行く。
その途中、ゴールドの視界にチコリータを抱いたクリスの姿が入る。

「博士、この子だれ?」

ウツギ博士は振り向き、ああと小さい声を出し、説明をはじめる。

「この子はキキョウシティのポケモントレーナー、霧咲クリスタルちゃんだよ。クリスちゃんはキキョウシティでは
ゲットのスペシャリストとして結構有名なんだよ。」

「そうなんだぁ。僕は春日金次って言うんだ。ゴールドって呼んで。よろしくね、クリスちゃん。」

自己紹介をし、握手をしようとゴールドは右手を前に出す。クリスはゴールドと握手を交わしながら、改めて自己紹介をする。

「はじめまして。霧咲クリスタルです。よろしくね、ゴールド君。」

クリスは、言い終えるとシルバーのほうを向く。

「えーっと、それであなたは・・・・?」

「オレは水月銀次。シルバーと呼んでくれ。」

それを聞くとクリスはまた微笑んで手を差し出す。

「よろしくね。シルバー君。」

「ああ。」

シルバーもクリスと握手を交わし、微笑む。

「3人とも自己紹介はすんだね。じゃあ、ちょっとした説明をしておくよ。クリスちゃんは知ってると思うけど、
ポケモンが傷ついたらそこにあるような機械や、ポケモンセンターでポケモンたちを休ませてあげてね。」

ウツギ博士が言葉と共に研究所の隅にある少し大きめな機械を指差す。
そして、何やらごそごそとポケットを探り、手のひら大の紫と白に塗り分けられたものを取り出す。

「それじゃあ、旅の餞別と言っちゃなんだけど、この”きずぐすり”を1つずつあげるよ。」

そう言ってウツギ博士はきずぐすりを3人に手渡す。

「ありがとう!博士!」

ゴールドがはしゃいだ様子で言う。
クリスとシルバーもお礼を言い、もらったきずぐすりをリュックやポケットにしまう。

「なあ、ゴールド。」

「なあに?」

シルバーがモンスターボールを持ってゴールドに話しかける。そして、

「オレとバトルしろ!」

「えっ!?」

ゴールドのポケモントレーナーとしての初バトルがはじまろうとしていた。






TO THE NEXT


あとがき
旅立つまでが長いです。すいません。
下書きとかなーり違ってたりしているんですよ、ここまでの話。
これからもそうなってしまうかもしれませんが・・・(ぇ)
ちなみに、バトルシーンがうまくかけるかわかりません!(きっぱり)
それでも読んでくださる方、ありがとうございます。
それでは次回をお楽しみに

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