ゴールドとシルバーのファーストバトルに決着がついたとき、
誰も予想しなかった声が聞こえてきた。

「ふ〜む、なかなかやるのう、2人とも。」

「え!?」

4人が振り向いた先には、白髪で赤いシャツと、濃い茶色のズボンを身につけ、 研究用の白衣を羽織っている老人がいた。

「あ、あなたはっ!!」

その人物を見た4人は声をそろえて驚いた声でその人物の名を言った。

「オーキド博士!!」

そう、ポケモントレーナーやそれを目指すものなら当然知っている人物、
そして、彼の住むカントー地方、マサラタウンから優秀なポケモントレーナーを世に送り出した子とでも有名な、
ポケモン研究の第1人者、オーキド ユキナリ博士だった。




第4話「認められた証拠」






4人はしばらく驚いた表情のままでいたが、そのうちハッと我に返り、最初にウツギ博士が口を開いた。

「オ、オーキド博士、いついらしていたんですか?」

「いやー、すまんすまん。実はウツギ君に用事があって研究所の前に来たら、中から技を指示するような声が聞こえての。
窓から見たら、そこの男の子2人がバトルをしていたんでな。」

オーキド博士は淡々と話しながら、ゴールドとシルバーを指差す。
2人は指差されて、内心ドキッとしていた。

「それで、研究所の中に入ったらいきなりそのヒノアラシが煙幕を使って、周りが見えなくなりじっとしていたんじゃよ。」

「そ、そうなんですか・・・」

ウツギ博士はあっけにとられた声で答えた。
一方ゴールドたちは、何をすればいいのかわからず、その場に立ち尽くしていた。

「そう言えばウツギ君、彼らは旅のトレーナーかな?」

オーキド博士が3人を見ながらウツギ博士に質問する。
ウツギ博士は、え?と声を出したが、何を答えればいいのかを考え、少しして答える。

「男の子2人はこれから旅に出る新米トレーナーです。
で、左の女の子はキキョウシティのゲットのスペシャリスト、霧咲クリスタルちゃんです。」

「ほう・・・、ゲットのスペシャリストとは君のことであったか!」

オーキド博士はウツギ博士の紹介を聞くと、急に大きな声を出した。
3人はいきなりのことに1歩下がってしまった。

「あ、すまんすまん。・・・ん?」

オーキド博士はハッとして3人に謝る。そして、3人の足元にいる3匹のポケモンに目が留まる。

「ウツギ君の研究しておった初心者用ポケモンじゃな。」

「はい。いま、クリスちゃんにはポケモンの成長に関する研究のデータをとってもらうために、
ゴールド君とシルバー君には、旅のパートナーとして渡しました。」

「そうか・・・」

オーキド博士は3匹を見ながらなにやら考え込む。その間、チコリータはクリスに抱き上げてほしいらしく、
クリスの足に、寄りかかっている。その様子に気づいたクリスはチコリータを抱き上げる。
チコリータは抱き上げられると、嬉しそうに一鳴きした。
ワニノコとヒノアラシはじっと見て来るオーキド博士を少し怖がったのか、
それぞれのトレーナーの後ろに隠れていた。
それらの様子を見たオーキド博士が話しだす。

「ほう、もらったばかりだというのになかなかなついておるのう。そうじゃ!
そんな君達を見込んで、ちょっとお願いをしたいんじゃがいいかの?特にクリス君。」

そういわれて、3人は顔を見合わせた。そしてすぐにオーキド博士のほうに顔の向きを戻す。

「僕はいいですよ。」

「俺も。」

先に、ゴールドとシルバーがオーキド博士に答えを言う。

「私もいいですよ。それで、何をすればいいんですか?」

クリスも笑顔で答えた。と、同時に質問を投げかける。それを聞くとオーキド博士は笑って話をはじめる。

「わははははっ、そりゃごもっともな質問じゃの。実はの、お願いと言うのはこれのことなんじゃよ。」

そういうと、オーキド博士は持っていたかばんの中から、赤い、手帳ぐらいの大きさの機械を3つ取り出した。
それを見たゴールドが、反射的に、おそらくその機械の名であろう言葉を口にする。

「・・・ポケモン図鑑・・・」

ゴールドが発した言葉を聞いて、えっ!?とその場にいた全員が3つの機械に視線を集める。

「そうじゃ。新型ポケモン図鑑、HANDY808じゃ。君たちには、この図鑑を完成させてほしいんじゃよ。」

「ちょっと待ってください。」

笑顔で話すオーキド博士の言葉が終わると同時に、ゴールドがはっきりと言った。

「本当にいいんですか?そのポケモン図鑑はオーキド博士が認めたトレーナーにしか渡さないんじゃ・・・・」

そう、ポケモン図鑑は、オーキド博士が認めたトレーナーにしか渡していない。
そして、図鑑をもらったことがあるのは、いまのところマサラタウン出身のポケモントレーナーだけで、
しかも、そのトレーナー達は、トレーナーとして優秀といわれるまでになっている人ばかり。
ゴールドは自分がその人たちと同じようになれるかどうかが心配になっていたのだった。
オーキド博士は、不安そうな目をしたゴールドに向かって語りかける。

「だから、これは君らを認めた証拠じゃよ。心配や不安など持たなくてよい。
過去に、図鑑を持って旅立ったトレーナーも、最初は君たちのような初心者トレーナーじゃった。
だから、これからの経験や努力しだいでどんなトレーナーにだってなれるんじゃよ。
君も、がんばればきっと木葉兄弟に負けないくらいの立派なトレーナーになれる。
旅をするのなら前向きな気持ちが必要じゃよ。」

オーキド博士は、ゴールドが何を考え、何を思っているかがわかっているようだった。
そして、オーキド博士の言葉を聞いた3人は、また顔を見合い、1歩前に出て図鑑を受け取った。

「やらせていただきます!」

3人の言葉を聞いたオーキド博士は、先ほどよりも嬉しそうにして、最後にこう付け加えた。

「それでは、図鑑の完成を楽しみに待っておるぞ!」

「はい!」

3人は、力強く答えた。祖祖いて、ころあいを見計らってウツギ博士が話し始める。

「それじゃあ、図鑑収集を引き受けた君たちにこれをあげるよ。」

ウツギ博士は、ポケットの中から赤と白に塗り分けられたモンスターボールを取り出し、1人5個ずつ渡した。

「ありがとう、博士!」

ゴールドが無邪気な笑顔でお礼を言う。それに答えて、ウツギ博士もにっこりと微笑んだ。

「3人とも、最初の目的地はヨシノシティだからね。ヨシノにはショップもあるから、もう少しきずぐすりとかを買って、
しっかりと旅支度をするといいよ。それと、いまぐらいから出発すれば夕方にはヨシノシティにつくと思うよ。」

「そっか、じゃあそろそろ出発しようかな。クリスちゃんも一緒に行かない?」

ゴールドがウツギ博士に向かって答えると、後ろを向いてクリスに聞く。

「え?いいの一緒に行って・・・」

「もちろん!旅は人数多いほうが楽しいだろうしね。」

ゴールドが笑いながら言う。
その笑顔につられてか、クリスもクスッと笑い、返事をする。

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

「うん!決まり!」

「じゃあ、よろしくな。クリス。」

3人は笑顔で、一緒に旅をする仲間として笑い、話し始めた。
その様子を見ていたウツギ博士がオーキド博士に話しかける。

「いい仲間になりそうですね。」

「そうじゃな。いままで何人か旅に送り出してきたが、
これほど仲良くスタートしたのは最初の4人のうちのあの3人ぐらいじゃよ。」

オーキド博士は、何か懐かしいものを見ているような、穏やかな表情を浮かべていた。
ウツギ博士は何かを質問しようとしたが、そんなオーキド博士の表情を見て口を閉じた。

ポケモンをもらった3人はまだ話し続けている。
ゴールドとシルバーはあの写真に写っていたような無邪気な笑顔で、
クリスもそんな2人に負けないくらいの笑顔を見せていた。

そして5分後、3人と研究者2人はウツギ研究所の門の前にいた。
いよいよ3人が旅立つときが来たのだ。

「それじゃあ、気をつけてね。何かあったら、僕のポケギアに連絡してくれ。」

「がんばるんじゃぞ!3人とも!」

ウツギ博士とオーキド博士が3人にエールを送る。
そんな2人の博士を見て、3人はクスッと笑い、元気よく挨拶をする。

「はい!いってきます!!」

3人は歩き出した。最初の目的地、ヨシノシティを目指して。



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