初夏の29番道路、草木がうっそうと生い茂り、その独特の香りを漂わせている。
そんな道路を、ゴールド、シルバー、クリスの3人はヨシノシティへ向けてあるいていた。

「シルバー!ほんとにこっちであってるのー!?」

がさがさと音を立てながらあるいていたゴールドが、2,3メートル後ろにいるシルバーに問いかける。
シルバーはその声を聞くと、自分のポケギアを操作しタウンマップを開く。
そして、ふと、その行動に疑問を持つ。

「なぁ、ゴールド。お前もポケギア持ってるんだよな?」

「え〜、持ってるけど?」

「だったらお前ので見ろっ!」

それを聞いたゴールドは、追いついてきたシルバーたちに苦笑いを見せていた。

「ははははは・・・・・・そうだったね・・・・」

「・・・・・・・・」

ゴールドのボケっぷりにシルバーたちは、その場であきれるしかなかった。




第7話「4人の先輩トレーナー」




さて、ゴールドのちょっとしたボケが入ったが、3人は休むことなく歩き続ける。

「にしても・・・・ちょっと疲れてきたな」

先頭を行くゴールドが言う。それにつられてか、クリスも口を開いた。

「草むらがこんなにつらいとは思ってなかったわ・・・・」

「あれ?でも、クリスちゃんってキキョウからきたんだよね?一度通って来てるはずなのになんでつらいわけ?」

ゴールドが即座に疑問に思ったことをクリスに聞く。
クリスは一息おいて、簡単に説明をした。

「私、来るときは草むらをほとんど避けてきたのよ・・・・だから。
それに、キキョウのほうにはこんなに背の高い草むらはないしね・・・・」

「ああ、なるほどね」

ゴールドは、クリスの説明を聞いて納得。

「そう言えばゴールド君。私のことはクリスでいいわよ。旅の仲間なんだし、ちゃんづけはやめましょ」

「あ、そういえばそうだね・・・・・。じゃあ、クリスも僕のことはゴールドって呼んでよ?」

「わかったわ」

二人がそこまで話すと同時に、少し先のほうからシルバーの声が聞こえてきた。

「ゴールド、クリス。こっちに休める場所があるからはやく来いよ。休憩、とったほうがいいだろ」

「わかった。すぐに行く」

ゴールドとクリスは、がさがさと草をかき分けてシルバーの声がしたほうへと向かう。
10メートルほど歩くと、草むらが切れ、目の前に広場が現れた。
その広場の真ん中あたりには、木が1本はえており、ちょうどいい具合に木陰ができている。

「休むにはちょうどいいわ」

「そうだね」

クリスがつぶやいた言葉にゴールドが返事をする。
シルバーはすでに木陰の中に入って腰を下ろしていた。
クリスとゴールドもその木陰に入り腰を下ろす。

「ふぅ・・結構戦ったな・・・・・ワニノコがばててる」

「僕のヒノアラシも・・・・」

実は、3人はここに来るまでに何十匹と言う野生のポケモンとバトルをしていたのだ。
ポケモンのレベルはかなり上がったが、トレーナーもポケモンも完全にばてていた。
しかし、その中でシルバーはハネッコをゲットしていた。

「そういえば、2人ともその子たちにニックネームはつけないの?」

クリスが、ゴールドたちの腰につけているモンスターボールを指差しながら言う。

「そういえばそうだな・・・」

「う〜ん・・・ニックネームかぁ・・・・・・。そういえば、クリスはチコリータのニックネームは考えたの?」

ゴールドが考えながらもクリスに聞く。クリスは微笑んでゴールドに答える。

「フフフ、私はもう決めてあるわよ。出てきて、チコリータ」

クリスがモンスターボールの開閉スイッチを押す。
白い光があふれ、チコリータが元気よく鳴き声を出して現れた。

「あなたは今日から”パティー”よ、チコリータ」

「チッコ〜〜〜!!」

チコリータは自分にニックネームをつけてくれたことがわかったのか、チコリータのパティーはクリスに抱きついた。

「う〜ん・・・・ま、とにかく2人とも出て来い」

シルバーが両手にワニノコとハネッコの入ったボールを持って少し高く投げる。
それと同時にゴールドもヒノアラシとポッポにボールの開閉スイッチを押した。

パカンッ

ちょっと高めの音と共に4匹のポケモンが姿を見せる。

「う〜ん・・・・ハネッコはなんとなく思いついたんだけどなぁ・・・」

「え?どんなの?」

シルバーはクリスの言葉を聞いてちょっと考えてから、ハネッコのニックネームをつぶやいた。

「・・・・・・ハネル・・・・・・・」

「は?」

シルバーの言った名前にゴールドが間抜けな声を出す。

「だからぁ〜、ハ・ネ・ル!!」

ゴールドは、ちょっと頬を赤くして言うシルバーをしばらく黙って見ていたが、少しすると口元を緩めた。

「ぷっ・・・ははは・・・ひひひひひっ・・・・ははははは・・・・・は、はらいたい・・・・くくくっ・・・!!」

「わ、笑うなぁ!!」

その光景は数時間前とはまるで逆の立場になっていた。
ゴールドは相変わらず腹を抱えて笑っており、シルバーは頬を真っ赤にして怒っている。
クリスもシルバーに見られないようにクスッと笑っていた。

ガサガサッ・・・・・

「!?」

突然ゴールドたちのいる広場の周りの草むらから音がした。

ガサガサガサ・・・・

音は自分達のほうに向かってきている。そのことがわかった3人は顔を見合わせ、
立ち上がってポケモン達を自分たちの足元に待機させる。

ガサガサガサ・・・・・・バサッ!!

「たいあ・・・・・・・・・・・・!?」

3人は草むらから出てきたものに攻撃はしなかった。
なぜなら、草むらから姿を見せたのは4人の人だったからだ。

「あ、ごめん。驚かせちゃったのかな?」

4人のうちの1人、赤い上着に赤と白の帽子をかぶった14歳ぐらいの少年がゴールドたちに声をかける。
ゴールドたちは、あっけに取られて口をあけたままその場に立ち尽くしている。

「お〜い・・・・君たち大丈夫かぁ〜?」

赤い上着の少年がゴールドの顔を覗きながら問いかける。
ゴールドたちは、その声でやっと我にかえって警戒の体勢を解く。

「ところで・・・おまえたちは?」

それを見計らってか、赤い上着の少年の隣にいたペンダントをかけ、
紫色の長袖のシャツに茶色のズボンをはいた少年がゴールドたちに問う。

「あ、僕、春日金次って言います。ゴールドと呼んでください」

ゴールドがちょっと間をあけて自己紹介をする。

「オレは水月銀次です。シルバーと呼んでください」

「私は霧咲クリスタルって言います。クリスって呼んでください」

一通り自己紹介を終えると、今度は赤い上着の少年の隣にいた黒いワンピースを着た少女が自己紹介をする。

「あたしは青希、水面 青希。ブルーって呼ばれてるわ。よろしくね」

「僕はイエロー、イエロー・デ・トキワグローブです。よろしく」

「オレはオーキド、大城戸 翠だ。グリーンと呼ばれている」

「で、オレは木葉、木葉 紅。レッドって呼んでくれ」

ブルーにつづいてむぎわら帽子をかぶった少年、ペンダントをかけた少年、赤い上着の少年と言う順番で自己紹介をした。
それを聞いてクリスはふと疑問に思う。

「レッドさんとグリーンさん?どっかで聞いたような・・・・・・」

そのクリスのつぶやきに、グリーンが気づき説明する。

「聞いたとしたら、ポケモンリーグのチャンピオンと準チャンピオンってことでじゃねーか?
 第9回のポケモンリーグで、レッドはチャンピオン、オレは準チャンピオンだからな・・・」

「ちなみにあたしは3位よ」

「ええっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

その場に驚きの叫びがこだました。
レッド達3人の言葉を聞いたゴールドたち3人は、驚きの表情をあらわにしていた。

「さ、3年前のポケモンリーグのチャンピオンと準チャンピオンッ!!? 」

ゴールドがレッドに聞き返す。

「そうさ、でもって、自慢じゃないけど俺の兄さんとグリーンの兄さんも同じ。
 オレの兄さんが第8回ポケモンリーグのチャンピオンで、グリーンの兄さんが準チャンピオン」

「す、すごい・・・・・兄弟そろってなんて・・・・・」

ゴールドたち3人は相変わらず口を開いたままでいる。

「お兄さんの名前って?」

ゴールドが目を輝かせてレッドに聞いた。
レッドは笑顔を崩さずに快くゴールドの質問に答える。

「オレの兄さんは木葉 賢、グリーンの兄さんは大城戸 秀だ」

「えっ!?木葉賢さんと大城戸秀さんって、最初にオーキド博士からポケモン図鑑をもっらたあのサトシさんとシゲルさん!? 」

「そう、そのサトシとシゲル」

やはり血がつながっているからだろうか?兄弟そろってポケモンリーグのチャンピオンになるなどと言う偉業を成し遂げるのは。

「今のところ、ポケモン図鑑をもらったりしてオーキド博士に認められたのは9人だよ」

「9にん?」

ゴールドが首をかしげる。
それを見たイエローは、どうしたんですか?と声をかける。

「いや・・・・それって僕達も入ってるのかなぁ・・・・・・って」

「なんでお前達が入るんだ?」

ゴールドの言葉にグリーンが食って掛かるように少し強めの口調で言った。
その態度に、ゴールドたちはちょっと引いてしまった。

「いや・・・・・・、実は僕達も持ってるんですよね・・・・ポケモン図鑑」

「なんだって!?」

レッドとグリーンは前に一歩進みだしてゴールドに聞く。

「いつもらったんだ?」

「え?・・・・今日ですけど」

「今日?と言うことは、お前達がウツギ博士からポケモンをもらった子たちか?」

レッドが3人に向かって問う。それに3人はコクコクとうなずく。

「疑って悪かった。そのポケモンをもらったやつの特徴を聞いてなかったからな」

「グリーン、ウツギ博士のせいにするようなことを言わないの」

グリーンが謝った後の言葉に対してブルーが忠告をする。グリーンは聞かないふりか、反応しなかった。
そんなやり取りの中、イエローがレッドに近づき、耳打ちをする。
すると、レッドは急に笑顔を消して真剣な表情になる。

「どうかしました?レッドさん、イエローさん」

クリスが声をかけると、レッドとイエローは話をやめ、シルバーのほうへと近づく。
レッドは真剣な顔のまま。イエローは、何か戸惑っているような表情を見せていた。

「突然で悪いんだけど、君のご両親はなんていう名前?」

レッドがシルバーに聞く。シルバーは、その言葉を聞くとうつむき黙り込んでしまった。
すると、突然ゴールドが大声を出す。

「レッドさん、お願いですから聞かないでください!お願いします!」

ゴールドは頭を深く下げる。その様子をレッドは先ほどの様子からは考えられないほど冷たい目をして見ていた。
そして、しばらくその場に静寂が訪れる。

「悪いが、それはできない。」

静寂をレッドが破る。それを聞いたとたんゴールドはバッと顔をあげ、レッドに食って掛かる。

「なぜですか!?なぜそんなに言わせようとするんですか!?
シルバーには悪いけど、シルバーは親のことを思い出したくないんですよ!?
それなのに・・・・なぜですか!?」

「・・・・・・・・・・これは重要なことなんだよ。俺達の仕事の中では。」

しばらく考えてレッドが答える。しかし、それにゴールドが納得するはずがなかった。

「仕事だからって・・・・・」

ゴールドがそこまで言ったとき、シルバーが一歩前に出る。
それに気づいたゴールドは、言葉を発するのをやめ、シルバーのほうを向く。

「オレの母は水月 智靖で、父は水月 一騎です・・・・・・、
でも・・・・・・・・どちらとも・・・・本当・・・・の親じゃ・・・・・・ありません。」

その震えた声で途切れ途切れに発せられたシルバーの言葉を聞いたレッド達4人は目を見開き、その場での動きをなくす。
シルバーはうつむき、つらくて泣きたいのを必死でこらえていた。そんなシルバーをゴールドが背中に手を当てて、木陰に座らせる。

「・・・・・シルバー、落ち着いて・・・・・大丈夫だから・・・」

ゴールドが優しくシルバーの背中をさする。

「すまない。いやな事を思い出させてしまって。」

レッドが、シルバーの前まで来て謝る。
シルバーはレッドの顔も見ず、ただうつむき黙っていた。

「シルバー、この先のことは僕が話しておいてもいいかな?」

シルバーはコクンと小さくうなずいた。
ゴールドは、それを見るとレッド達4人を少しはなれたところへと移動させて、説明する。

「今お聞きになった通り、シルバーの親は本当の親ではありません。
シルバーは3歳のときに母親に捨てられたそうです。」

ゴールドの言葉をクリスを含め、5人は黙って聞いている。

「シルバーは、本当の親の顔を覚えていませんし、名前も覚えていないそうです。
シルバーはワカバタウンの中央公園に母親と一緒に遊びに来てて、
母親が買い物をしてくるといったきり戻ってこなかったとシルバーは言っていました。
そのシルバーの服のポケットに入っていた紙に、シルバーを引き取った水月さんが気づいて紙を見ると、
銀次という名前と生年月日、シルバーの本当の母親の謝罪文ととれるものが書いてあったそうです」

「その紙にはなんて書いてあったんですか?」

イエローが紙のないようについて疑問を持ち、ゴールドに問う。
ゴールドはイエローの問いに肩をすくめた。

「わかりません。その内容までは聞いていないので・・・・」

「そうですか」

そのイエローの言葉を最後に、あたりはまたも静寂に包まれた。
だが、その静寂を打ち破ったのもイエローだった。

「あ、そう言えばレッドさん。はやくカントーに戻らなきゃいけないんじゃなかったんでしたっけ?」

「え?」

レッドは、イエローに聞かれて腕につけてあったポケギアを見た。
時計はもう4時になろうとしているところだ。

「まずっ・・・確か5時にヤマブキシティだっけ!? 」

レッドがいきなりあわてだす。

「まったく、しょうがない・・・・リザードン!!」

グリーンが空高くボールを投げる。ボールは落下をはじめるかどうかというところでひらき、
中から白い光に包まれてリザードンが現れた。

「プテも頼む!」

グリーンにつづいてレッドはプテラをボールから出す。
グリーンはリザードンが地上に下りてくるとその背中に乗った。

「イエロー、ほら乗れ」

イエローは、グリーンの声を聞くとリザードンの背中へと乗る。
レッドもブルーを一緒に乗せて、飛び立つ準備をしていた。

「じゃあな3人とも、また会えるといいな」

レッドが笑顔で3人に話しかける。
それと同時にグリーンはリザードンにヤマブキシティまで空を飛ぶを使うように指示をする。
バサッという羽音を立ててリザードンが大空へと飛び上がる。
レッドもプテラに指示をしようとしたが、ふと何かを思い出しゴールドたちのほうへ向き直る。

「そうそう、今ヨシノシティにオレの兄さんと紅先輩と碧先輩がいるはずだから会ってみるといいよ」

「え!?サトシさん達が来てるんですか!?」

クリスがレッドに聞く。
レッドは笑顔でそうだよと答える。それを言いながらレッドはポケットから小さな包みを取り出す。
「それで、悪いんだけどこれを兄さんたちに渡しておいてくれないか?」

「これは?」

レッドから包みを受け取ったクリスがそれを眺めながらレッドに聞く。

「特製のポケギアの拡張カード。オーキド博士からって言っておいてくれ」

「はい。わかりました」

ゴールドが元気よく答える。それを聞くと、レッドはプテラに空を飛ぶを指示し、
グリーンの後をおってヤマブキシティへと向かった。
ゴールドとクリスは、レッド達が見えなくなるまで空を見たあと、シルバーのほうへと歩み寄った。

「シルバー、もう大丈夫だから。・・・ね。そんな風にしてるの、シルバーらしくないよ・・・」

ゴールドは笑顔でシルバーに話しかける。
シルバーはそれを聞くと、少し微笑み立ち上がる。

「そうだな・・・・・・・じゃあ、ヨシノシティにいこうか」

「うん!」

元気になったシルバーを見て、ゴールドは心から安心していた。
そして3人はまた、ヨシノシティに向けて歩き出した。

「ゴールド、・・・・・ありがとう」

シルバーがゴールドに聞こえない声でつぶやいた。



そしてその1時間後。
3人はヨシノシティに到着していた。
シルバーもすっかり元気を取り戻し、一行はポケモンセンターへと入って行った。

ポケモンセンターに入った3人は入り口正面にあるカウンターへと向かった。
カウンターの先には、パソコンに向かっているジョーイの姿があった。

「すいません」

クリスが、ジョーイに声をかける。ジョーイは声をかけられるとパソコンから目をはなし、
クリス達のほうに向く。

「お疲れ様です。ポケモンの回復ですか?」

「はい、お願いします」

「それではこちらにモンスターボールをお乗せください」

クリスはなれた口調でジョーイと話をすると、差し出されたボールトレーに自分のモンスターボールを置く。
ゴールドたちもボールトレーにモンスターボールを置く。

「お預かりいたします」

ジョーイは、3つのボールトレーを回復機におく。
そして、またクリス達のほうを向き、笑顔で少々お待ちくださいと言った。

「わかりました」

ゴールドが返事をしたそのとき、

「ゴールド君とシルバー君、それにクリスちゃんだね。」

「え?」

3人が振り向くと、そこには緑色でLのような形の刺繍のある赤と白の帽子をかぶり、
黒いシャツのうえに青い上着、そしてジーパンを身につけていた。



TO THE NEXT

あとがき

な、なんじゃこりゃーーーー!!!
何を書いてるんだ僕は・・・・
何さこの中盤は・・・めちゃくちゃ暗いっ!!
シルバーファンの皆様ごめんなさい。
ホントはこんなに暗くするつもりはなかったんです。(いいわけ)
次回はもっと明るくなるようにがんばります。
それでは次回お会いいたしましょう。

6話へ 戻る 8話へ